42)Date in Orlando  98.2.25

 この文章は、ML仲間の福永さんがOrlandoの娘とデートしたときのレポートです。

【 Date in Orlando、父と娘の話】-by crisp 福永

 黒のワーゲンから降り立った彼女は長い黒髪の小柄な娘だった。彼女の父親に紹介されて長い外国滞在中 に会うことになった、ここは”夢の国”フロリダ州オーランドである。折りからサザンスタイルのこじんま りしたホテルのロビーの一角では結婚式が始まりつつあり、白いドレスに身を包んだ長身の黒人女性やリー スを手にした子供たちが落ち着いた華やぎを演出している。心地よい冬の宵である。

 彼女とは私の最初の長期滞在地であるミルウォーキーを発つ前にあらかじめアジアのエスニック料理を一 緒することにしてある。彼女が紹介してくれたレストランはホテルからも近い天井がアルプスの山小屋のよ うに切り立って高く、壁には国のアンティークを飾った比較的規模は大きいが落ち着いた雰囲気のタイレス トランである。

 サテイを肴にビールで改めて初対面の挨拶を交わす。父親とは団塊MLを通じてのみの知人関係なのに、ま ずその娘にこうしてかの地でデイトに及ぶとは、不思議なインターネットの取り持つ縁である。あらかじめ お互いについて多少の情報は父親から仕入れておいたとはいえ、ぎこちないスタートであるのはやむを得ない。

 彼女にとってオーランドはディズニーワールドとは関係なく、学業のための地である。すでに16の時に 初めてホームステイでサンフランシスコに渡り、ミネアポリス、アトランタ、ニューヨーク、メキシコなど あちこちを訪れてきたという行動派だが、寿司を食べ近所のコンビニに行くのがたまに日本に帰省するとき の楽しみであるという、団塊人かとも誤解されそうな”日本好き”である。4年間今は定年退職した父親に 学費を出してもらったから、この2年はとにかく自分で学費と生活費を稼ぎ出したかったといい、新しい車 まで自らの稼ぎで買った頑張り屋でもある。ほぼ一世代前に、自らの蓄えを基に初めての外国アメリカで掃 除や皿洗いをしながら学校に通った自分の過去を重ねあわせながら彼女の話に耳を傾ける。

 期待したよりはスパイスの不足気味の米と魚料理を小分けにして食べ、程よく冷えたビールで喉の渇きを 癒しながら次第にうち解ける。彼女は時にはにかんでうつむき、話に夢中になると少女っぽくフォークを右 手に握り締める。2年間現地の日系企業で働きながらあと1月あまりでインターナショナルビジネスの修士 課程の卒業試験を迎えようとしている彼女は、前回7人のうち3人しか合格しなかったというその試験の厳 しさについて不安を隠さない。試験に合格して晴れて卒業の栄冠を勝ち取ったら、だだっ広いだけの退屈な オーランドを離れ、できれば西海岸に職を得て移りたいと考えている。もしそれが実現したらそこに永住す ることになるのかもしれない。自らのキャリアを作りつつ両親を安心させられるのは、日本に距離的にも近 くしかもアジアをすでに文化の中に取り込みつつある西海岸しかないと考えている。永住するかどうかの決 断は、彼女にとって多分一生にいくつかしかない重要な決断である。アメリカの企業で現地の人間と競争し てやっていく力が備わっているかどうかは初対面の私には分かりようもない。英語の力と意志の強さはその 中でももっとも重要な条件である。

 現地人の基準ではスナック程度の量で満腹になった我々は、経営者が最近変わったばかりという彼女の馴 染みの日本料理店に席を移す。このあたりも彼女の生活圏である。経営者夫婦の4歳になる娘は現地人だけ の幼稚園に通うが、英語と日本語を上手に使い分けるという。カウンター越しにそんな話をしながら、修士 課程を英語で勉強する彼女ともども、我々も3歳から英語教育を受けていればどんなにか今頃楽であろうと、 ため息をつくことしきりである。帰り間際にすすった味噌汁とお茶の味は日本の基準でいくと”まずい”の だがこちらではめったにお目にかかれないから”うまい”。それともこちらの食べ物で味覚を変えられたの であろうか。英語でものを考えて現地の人間だけと付き合ううちに、顔つきまで現地の人間に似てくるぐら いだから、短期間で味覚も変わることは大いにあり得るだろう。娘を遠くに置くことは違いが増えてくるこ との寂しさと同義でもあるかもしれない。

 ”Date in Orlando”を団塊MLで報告すること、これは彼女の父親からのリクエストである。娘が父と離 れて暮らす、そして前より仲良くなったと娘が漏らす。父は常に娘のことは気にかけていたに違いないが、 毎日顔を付き合わしている中で、それを表現するには団塊の男には恥ずかしい。しかし、離れ離れになりコ ミュニケーション手段が限られるようになって、想いの表現が素直になる。帰りの彼女の車に乗り込む時に、 ”Mさん、お父さんから一つリクエストされていることがあるんですよ”と団塊MLでの紹介のことを彼女に 告げたときの”変なお父さん・・・”という彼女の呟きは、彼女の側からの父親への想いの偶然の表われで あろう。

久しぶりに女性と楽しい宵を過ごしたcrisp福永より


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