16)人事         97.3.23

 特ダネ競争のなかでも人事は、経済記者の力量を試される、ある意味で嫌な取材であった。上場会社や主要経済団体のトップが標的になるのだが、ことの性質上、隠密取材、つまり夜討朝駆けが中心になる。といって、トップが自らの進退を記者に簡単に明かすものではない。タヌキとキツネの化かしあいというか、禅問答は若いころは苦手中の苦手だった。

 それに人事の嫌なのは、ベタ記事(1段見出し)でも、決定的なら追いかけざるをえないこと。普通、他社に5段で抜かれたら、追っかけは2−3段と小さくなる。ところが、1段より小さい見出しはないから、ベタ記事で抜かれると同じ扱いで追っかけるしかない。先輩は「ベタ記事もまともに抜けない奴に、大きな特ダネを抜けるはずがない」とよく説教されたが、ベタ記事ほどやるせないものもなかった。

 それにしても、この人事をめぐる新聞社間の特ダネ競争。一般の読者から見るとバカげて見えることだろう。他社の社長交代を1日2日早く書いて「どれだけの価値があるのか」と取材相手にもよく言われた。「そのエネルギーを他に使えば、もっといい企画が書けるじゃないの」とも言われた。ご説ごもっともなれど、同じセリフをデスクが言ってくれるはずがないのです。(^_^)


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