9)肩書    97.2.10

 娘が小学生のころ「お父さんは何長?」と聞いたことがある。一瞬、何のことかと思ったが、肩書のことだとわかった。つまり、会社では部長なのか、課長なのか、それとも係長かという問いである。学校で、友達同士でそんなことが話題になるらしい。

 「長はつかん。なんにもない。記者だけ」と答えると、「ふーん」と不思議そうな顔をしていた。当時40歳に手の届く年代だったから、友達の父親はなんらかの「長」が多かったのだろう。記者は第1線にいる限り普通は肩書なしの記者だけ。それで疑問を感じたことはなかったものの、娘に改めてそんなことを聞かれると、考えてしまう。

 記者が「長」になるのは第1線を退くときで、ラインの場合は副部長(社によっては次長)になる。しかし、デスクと呼ぶのが普通で「長」づきで呼ばれるのは、部長までない。ラインに縁がなくて「歳をくったから」といただくのが編集委員である。もちろん、昔風に言えば大記者にふさわしい編集委員もたくさんいる。しかし、私の場合はお世辞にも大記者とは言えない編集委員だった。結局、編集にいた23年間は「長」には縁がなかった。


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