2)インサイダー取引    97.1.28

 経済部に配属された新米記者は、まず北浜に放りこまれる。どんな会社があって、どんな事業をやっている のかを一通りマスターするためだ。仕手株だの、吉野筋だの、わけのわからない言葉に翻弄され、情報洪水の 中を右往左往する毎日だ。

 北浜の記者クラブには何度も出たり入ったりで、通算すると随分長く担当した。ベテランになってくると、 よく「随分もうけてるんじゃないの?」と冷やかされる。しかし、株ほどむずかしいものはない。株ほど恐い ものはない。たとえ片隅でも、巨額のカネがうずまく舞台に立っていると、「恐い」が本音である。

 第一、資金がない。しがない新聞記者がその気になっても、タカがしれている。長い北浜生活で悟ったこと は「株はドブに捨ててもいいカネを持っている人がやるもの」だった。でないと、もうからない。また、これ は歯がゆいことでもあったが、毎日新聞が北浜ネタを派手に書いても、相場に与える影響はしれていた。一般 紙では日経、それに専門紙が書くと、ベタ(1段)記事でもピンと株価に響く。

 ちなみにNTT株を「買うな」とアドバイスして以来、妻は株に関しては私を全く評価していない。世情に 言うインサイダー取引など無縁な23年間だった。


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