米国初の全国紙「USA TODAY」100万部突破

1983.11.5 毎日新聞

 「宇宙からニュースをあなたに」をキャッチフレーズに、米国初の全国紙として“USA TODAY”が華々しく登場したのは、昨年の9月。首都ワシントンとボルチモア周辺の5州で、発行部数20万部からスタートした同紙は「カラフルでシンプルな記事」を売り物に、また全米各都市の歩道という歩道に置きまくった自動販売機を武器に、このほど100万部の大台を突破、創刊5カ年計画の第2段階に入った。いま米国のマスコミ関係者は「広大な米国で果たして全国紙が成り立つのかどうか」と、同紙の挑戦を興味深く見守っている。(中出眞澄記者)

 「いろんな考えを持つ国民をユニファイ(一つのものに)し、国としてまとまるのに役立ちたい」−−。10月の下旬、毎日新聞社と萬年社共催の「毎日新聞ミドル・マネジメント・セミナー」の一行12人がワシントンの郊外にある同社を視察したとき、広報担当のM・T・クラーク氏は誇らしげに語った。
 親会社であるガネット社は、全米各地で85の日刊紙と30の週刊新聞を発行し、6つのテレビ局と13のラジオ放送局を持つマンモス・マスコミ。クラーク氏の語った“USA TODAY”発行の狙いは、ガネット社会長兼社長のA・H・ニューハース氏の意図でもあるわけだ。
 そして、実際の紙面は「読まれるのも、売られるのもテレビのように、が特徴だ」(クラーク氏)と明解だ。同紙は日本の新聞に比べるとややタテ長で、横幅は5センチほど短い。10月21日号を例にとると、総合面ともいえるニュースラインが12ページ、金融面6ページ、スポーツ面12ページ、生活面6ページの計36ページ。うち8ページが多色刷りで、図やグラフも多く、視覚に訴える編集方針が貫かれている。
 そして、ニューヨーク、ワシントン、ダラスなどセミナー一行が立ち寄った都市で、赤信号で立ち止まると必ず目についたのが、テレビの形をしたブルーと白の派手な自販機。総発行部数の84%をこれでさばいている。この自販機の物量作戦は,他紙から規制すべきだとの非難の声があがったことからも、威力のほどがうかがい知れる。
 全国紙としての同紙を縁の下ならぬ宇宙から支えているのは、人工衛星“ウェスターV”。本社で編集された紙面は、人工衛星経由のファクシミリで全米23州にある印刷工場に送信される。これで、地域的には、ほぼ全米、人口の65%をカバーできているという。
 革新的な技術と紙面づくりで全国紙へのスタートを切ったが、1年後の9月末の時点で、同紙の発行部数は目標の115万部を上回る116万部と発表した。これはウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・デイリー・ミューズに次いで全米第3位に当たる。ガネット社のニューハース会長によると、1987年を最終年度とする5カ年計画では「印刷能力を現在の40ページから48ページへ、カラーを8ページから倍の16ページへ増やし、235万部を目指す」という。もちろん、発行部数は全米トップになる。これは、ウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・デイリー・ニューズに次いで全米第3位に当たる。ガネット社のニューハース会長によると、1987年を最終年度とする5カ年計画では「印刷能力を現在の40ページから48ページへ、カラーを8ページの倍の16ページへ235万部を目指す」という。もちろん、発行部数は全米トップになる。
 米国のマスコミ関係者の間には当然、同紙の快進撃ぶりに疑問を投げかける向きもある。例えば、ニュスペーパー・ビジネス誌は「116万部がすべて料金を取っている部数なのか疑問」と指摘。ガネット社が明かさない投資負担にからんでも、新聞アナリストのJ・モートン氏は「83年前半だけで4100万ドル(約100億円)、年間では7000万ドル(約170億円)、年間では7000万ドルの損失」と推定している。  これに対し、ニューハース氏は「87年には利益が出る体制になる」と語るとともに「1年で最終判断を下すのは早計だが、この1年の経験から、我々の5カ年計画は達成されるものと確信している」と自信満々。まだまだ、USA TODAY旋風が吹き荒れそうだ。 inserted by FC2 system