米国流通業のニューウェーブ(4)「グルメ・ショップ」
−−活性化図るスーパー−−
−−豪華ムード、世界の酒−−

1983.12.5 毎日新聞

 フランス語でグルメ(GOURMET)といえば食通のことだが、ちょうど1年前、グルメを対象にしたスーパー・マーケットが二つ、ほぼ同時にオープンして話題になった。
 一つは、ニューヨーク。緑に包まれたセントラル・パークの西側、コロンブス通りにある「DDL FOOD SHOW」=写真=。売り場面積は約1100平方メートルの小じんまりとした店だが、いかにもグルメ向きといった雰囲気で、ゆったりとした気分にひたれるレイアウトだ。本業は映画プロデューサーというオーナーが「おいしいものを食べるためならカネに糸目を付けない人が対象」と豪語するだけに、2オンス(56グラム)びんが40ドル(約9400円)のサーモン・キャビア(いくら)などがズラリと並ぶ様は、一般のスーパーとはひと味もふた味もちがう。
 入り口を入ってすぐのレジから左手を見ると、店舗としっくりと溶け合った感じでレストランがあるし、主に生鮮品の陳列されている奥まった一角には、天井が吹き抜けになっていて、しかも総ガラス張り。明るさと、たっぷりとある空間が売り物になっている。また、店舗とは区切られているが、裏手に広いキチンがあり、主婦が1日こもって手作り料理を楽しむこともできるし、家庭でのちょっとしたパーティーへの出張サービスも引き受けてくれる。
 もう一つのグルメ・ショップは、バージニア州マックリーンにある「グルメ・サムプレイス・スペシャル」。全米に100以上の食品スーパーを展開しているジャイアント・フードが、マックリーン店の目の前に実験店の意味あいもこめてオープンしたもの。売り場面積は1600平方メートル強と、DDLに比べればやや広く、店内レイアウトも普通の食品スーパーに近いが、やはり、やぼったさは避け、シンプルななかにも豪華なムードをかもし出しているのが店内の特徴。訪れた日は、ちょうどドイツ祭のさなかだった関係で、天井から“レーベンスミッテル”(食料品)などドイツ語の看板が数枚ぶら下がっていたが、いつもは目ざわりな看板は一切ないという。たまたま目についたドイツ語の看板にしても、同店のグルメ・ムードを壊すようなものではなく、かえって豪華なムードを盛り上げるのに役立っているような印象さえ受けた。E・マイルズ店長によると「客層は当初、高所得層に置いていたのだが、実績は中産層が中心」という。
 スーパーの活性化は、この二つの例のような高級化路線だけではない。セーフウェーが昨年2月、サンフランシスコのティバロンにあった昔風の小さなスーパーを改装してオープンした「ボナペチ」(約1500平方メートル)は、しゃれた作りのコーナー展開が自慢。パン、花、自然食品などのコーナーを周辺に配し、中央部はかなりのスペースを酒類に割き、傾斜をつけた段ちがいだなによる展示で迫力を出している。同じセーフウェーがサンノゼにオープンした「リッカー・バーン」は、2200平方メートルのフロアがすべて世界の酒で埋まっているユニークな店だ。
 西村哲アーマ・ジャパン社長(成城大学講師)によると「1950〜60年代に誕生した1500平方メートルクラスのスーパーは、1万平方メートルを超える大型スーパーの出現で、否応なしに活性化を迫られるケースがふえている」という。新しい波がさらに新しい波を呼ぶ構図が米国各地で繰り広げられているわけだ。
            =中出眞澄記者(つづく) inserted by FC2 system