米国流通業のニューウェーブ(3)「未来店舗」
−−常識破った商品構成−−
−−品揃えに電算機活用−−

1983.11.28 毎日新聞

 ニューヨークのケネディ空港からフィラデルフィア空港まで、30人乗りの双発機で45分。さらに車で40分ほど。フィラデルフィア市のキング・オブ・プラシアにある大ショッピング・センターの一角に、この7月、シアーズ・ローバックの「未来店舗」(ストアーズ・オブ・ザ・フューチャー)1号店=写真=がオープンした。店舗面積は約2万平方メートル。このショッピング・センター内には、同業のJ・C・ペニーや、ジョン・ワナメーカー、また隣接の別棟には、百貨店のブルーミングデールや、バンバーガーズ、アブラハム・アンド・ストラウスなどが核店舗として入っているが、米国の流通関係のマスコミをもっぱらにぎわしているのは、このシアーズの未来店舗第1号だ。
 未来店舗というと、何やらSFめいた、また科学の粋をこらした店舗のような印象を受けるが、実はそうではない。シアーズの小売り部門の会長、E・ブレナン氏が就任来3年がかりで検討し計画を進めてきた「1980年代を生き残るための新戦略」(西村哲アーマ・ジャパン社長)のネーミングなのだ。成城大学で「アメリカ流通産業論」を講義している西村氏は記者とともにシアーズ未来店舗第1号を見学した印象を「従来のシアーズのやぼったいイメージをまったく一新したもの」と語っている。
 シアーズは全米で800を超える小売店舗網を展開する米国最大の小売業者だが、どちらかというと家電製品や家庭用品などのハード系商品に強みを持ち、自社開発(PB)商品の比重が非常に高いことで知られている。未来店舗はそのイメージを大きく変えるため、婦人服を中心にソフト系商品を見直し、店舗レイアウト、陳列技術、商品ラインなどに工夫をこらしている。ブレナン氏の言葉を借りれば「われわれは文字どおり紙上で店舗をメチャメチャに分解した。そして770もある商品ラインを新しい、もっとエキサイティングな環境の中に組み立て直した」わけだ。
 未来店舗を言葉で紹介するのはむずかしいが、例えば婦人服のフロアは同じショッピング・センターにある高級百貨店ブルーミングデールに決してヒケをとらないムードをかもし出している。商品のグループ化ひとつをとっても、従来の区切りの常識は無視され、ライフ・スタイルに合った構成を思い切って採用している。しかも、ハード系、ソフト系双方の商品に力を入れ、百貨店や専門店と比較しても「幅」と「深み」のある品揃えを安い価格で実現しているのだ。
 店舗のシステムでは、光読み取りガンで商品データを瞬時にコンピューターに読み込むEPOSターミナルがレジで活躍。商品補充サイクルを速めるのにも抜群の効果を発揮し、これが間接的に品揃えに大きな効果もあげている。また、大型商品の場合は、レジで客に領収書を発行すると同時にストックセンターに指示が流れ、商品は客の車のある駐車場へ回る仕組みだ。
 シアーズは、ことしと来年中だけで未来店舗を20店近く出店する予定だが、そのほとんどが既存店を閉鎖し移転するスクラップ・アンド・ビルド型で、全体の効率アップもねらっている。「There's More for your Life at Sears」(シアーズに来れば、あなたの生活をより良くするものが多くある)を掲げるシアーズの未来店舗は、同業他社にとっても無視できない新しい波といえよう。(つづく)                    =中出眞澄記者 inserted by FC2 system